Q ナノ理工学専攻を目指したきっかけは?

 先進理工学部の応用化学科に所属をしていて、そのまま大学院に進んだらナノ理工学専攻だったというのが正直なところです。本間先生は応用化学専攻の教員でもあるので、私としては本間研究室に入ったという自覚の方が強いです。とはいえ、もともと興味を持っていたのは、ナノの分野で化学的なアプローチをするという研究領域なので、「ナノ理工学専攻」の所属というのは違和感がありません。

 ナノ理工学専攻は基幹理工学部からは電子光システム学科、先進理工学部からは物理・応用物理・応用化学科・電気情報生命工学科から進学でき、大学院ですから他大学さらには社会人学生もいるので、いろいろなバックグラウンドの人が集まっています。共同の研究設備が多いので交流もあり、刺激をもらいながら研究をしています。

 

Q 研究内容を教えてください。

 太陽電池を構成する高純度シリコンの原料となるシリカ(※二酸化ケイ素)の純度を高める研究をしています。太陽電池というと、建物の屋上に貼ってある黒いパネルをイメージされると思いますが、まさにあれがシリコンで、その原料がシリカです。シリコンは酸素に次いで地殻中に二番目に多い物質ですが、単体では存在していないため、シリコンへの還元と不純物除去(高純度化)が必要です。

 

 

太陽電池のための、シリコン生産システムを

Q そのシリカの純度を高めるとどうなるのですか?

 もともとシリコンは半導体産業(PCのICチップなど)での使用が主で、半導体は部品自体の小型化が進んでいるので、太陽電池と比べると相対的に少量で済みました。しかし太陽電池、特に最近話題になっているメガソーラー等を考えると、とにかく量が必要です。現状のシリコンの製造現場では、半導体生産の製造プロセスがとられており、製造コストが高いことが課題となっています。また、原料自体にも世界中に遍在しているので、今後の需要を考えると代替となる生産プロセスの確立は急務です。

 その代替プロセスとして、原料であるシリカ自体の純度を高めて低コストかつ安定にシリコンを生産することが研究されています。シリカの高純度化をするにあたり、効率的な不純物除去方法の確立は重要な課題です。私の研究は、反応を効率的に行なうことのできるマイクロ流路というものに着目し、低コストかつ高速にシリカを高純度化する手法の構築を目指しています。

 

Q 太陽電池を研究テーマに選んだのはなぜですか?

 もともと環境問題に関心があり、このテーマを選びました。化石燃料は確実に枯渇しますし、原子力発電も、福島第一原発の事故により表面化しましたが、まだまだ課題が山積しています。地球にあるエネルギーを考えた時、「外」から入ってくるものは太陽光だけです。いつでも地球に降り注いでいるエネルギーを活用しない手はないと思います。

 もともと精密機器に用いられていたシリコンですので、ナノ理工学的なアプローチでこの課題に取り組むことはとても有用だと考えています。

 

 

自分が誇りに思えるような研究を

Q 学業以外に取り組んでいることはありますか?

 品川区キャンプ協会という団体で、小・中学生や家族連れのキャンプ初心者の指導をしています。一番大きなイベントが年に一度の小・中学生対象のキャンプの企画運営で、それ以外にもキャンプ場の運営管理や、デイキャンプイベントなどもあって、一年中活動しています。

 キャンプをするのが好きというよりも、キャンプをしにきている「人」が好きなんです。老若男女、経歴や立場もばらばらな人がいらっしゃるので、普段会えない人と交流できる、貴重な場になっています。

 

Q ナノ理工を志望する学生にメッセージを

 どうしてその専攻に進み、何がしたいという明確な目的意識が重要です。学部時代のように、与えられたことをこなせば良い、ということではなくて、自分で何をするのかを決めていくことが多くなってきます。就職のことを考えて、修士まで行った方が良いからというような気持ちでは、辛くなってきます。せっかく研究をするのですから、自分が誇りに思えるようなことを追求する、というような気持ちをもったほうがいいのではないでしょうか。